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「口から食べられなくなったらどうしよう…」。皆さんは考えたことがあるでしょうか?

高齢になってくると、こういった問題に直面することがあります。しかし、多くの方はその時になって初めて「どうしよう…」と考えます。

「食べること=生きること」「食べられない=死んでしまう」
食べることは生と直結しています。少し前までは「食べられなくなった時が寿命」でしたが、医療が発達した今、色々な方法でそれを補うことが可能になっています。しかし、深く考えずに選択してしまうと、その後の人生が辛いものになるでしょう。

本人が「どう生きたいか」を大切にするために、経口摂取ができなくなった時の栄養ケアについてご紹介したいと思います。

主に「経鼻胃管法」「胃ろう造設法」「静脈栄養」がありますが、そのなかでも今回は「経鼻胃管法」と「胃ろう造設法」についてお話します。

何を選択するかによって、その方の余命や負担、生活の場などが大きく変わりますので、事前に知識として入れておくと良いでしょう。

 

経鼻胃管・胃ろうと老人ホームの関係

両者ともに医療行為になります。そのため病院などの医療機関でなければ難しいとお考えの方もいらっしゃいますが今は少し異なります。

高齢者の増加に伴いさまざまな事情を抱えた方がいらっしゃいますので、老人ホームなどの施設でも医療行為が必要な方の受け入れ整備に向けて努力されています。そのため、今回ご紹介する経鼻胃管と胃ろうを入居OKとする施設は多く存在します。

どの老人ホームにも看護師や提携医がおりますので、介護職や相談員と連携し、老人ホームで生活しながらも安全な医療を提供しています。

経鼻胃管や胃ろうでも受けてくれる施設の種類は以下の通りです。

当然すべての施設で受け入れOKという訳ではありません。同種類の施設によっても「受け入れ不可」としている所もあります。

また、「定員の5~20%」程度の枠を設けており、100名定員の施設では5名~20名ほどの胃ろう等患者が入居できるよう体制を整えています。そのため、タイミングによっては受け入れできませんと言われてしまうこともあります。

ケアハウスやグループホームなどは重度者の受け入れを想定していませんので、胃ろう造設などの話が出てくるほど介護度が上がってしまうと退去の案内をされます。

 

経鼻胃管法

口からの食事を満足に摂れない人が使用する方法です。鼻や胃からチューブを通して栄養剤を入れることで栄養状態や生命の確保を図ります。

32チューブの挿入は看護師でも出来ます。ただ、チューブが胃に届いているのか定期的に確認する必要がありますので、在宅生活を前提に考えている場合、この方法は難しいです(看護師が1人で確認しながら別作業しなければならず大変なため)。

この方法が長く続いたり、経口摂取が見込めない場合には胃ろうの造設をします。

 

メリット

◆胃管の挿入は看護師でも出来る
◆胃ろうのように、腹部や胃に穴を作らなくてよい
◆胃管が確実に胃内に挿入されていれば、重篤な合併症の危険は低い

手術の必要がなく、必要な時すぐに設置することができるのがメリットと言えるでしょう。当然、不要になればすぐ撤去できます。そういった意味では本人の負担は少ないといえるでしょう。

また、胃管の挿入がしっかりと出来ていれば合併症の危険性は低くなります。チューブの固定がなされていないと、びらんや潰瘍などが生じてしまいます。チューブの太さや材質に気を配る必要がありますが、正しく挿入できていれば本人にとってもリスクは少なく済むでしょう。

 

デメリット

◆自己抜去の危険性が高い。身体拘束、抑制が必要な場合も
◆胃の内容物が食道へ逆流しやすい
◆管が汚染されやすい。胃管を介しての感染(誤嚥性肺炎)のリスク大きい
◆チューブの内径が小さいため管が詰まりやすい
◆管による違和感や苦痛などが大きい

認知症の方などに多いですが、自分でチューブを抜いてしまう危険性があります。病院でそのような行為が見られ場合、手足を拘束したり、動きを制限する対応をせざるを得ません。

また、鼻汁や痰でチューブが汚染されるので、誤嚥性肺炎のリスクは高まります。

そして、ご本人にとって辛いのが、管が通っていることによる違和感です。簡単に設置できますが、管が体を通っている苦痛は続きます。

 

経鼻胃管法のまとめ

簡単に取り外しが可能なため、手術を要する胃ろうと比較すると導入時の負担は少なく済みます。しかし、チューブが体内にあることによる違和感が本人の苦痛へと繋がりますので、認知症の方は不穏に繋がります。

在宅生活を継続される場合には、この方法を選択するケースは少ないですが、老人ホームに入居するのであれば入居に際して比較的問題は少ないでしょう。

胃ろうよりも管理が簡便なため受け入れも良好ですので、上記の「経鼻胃・胃ろうでも受け入れる施設」一覧から選んでいくと割とすぐに見つかります。

しかし、近いうちに胃ろうやIVHになるリスクは十分ありますので、入居した後に「当施設で胃ろうの方は受け入れしていませんので退去を…」と案内されるかもしれません。同じ施設で長く生活を続けたいのであれば、胃ろうやIVHも受け入れている施設を選択しておいたほ方が良いでしょう。

 

胃ろう造設法

口から食べ物を摂取できなくなった時に、「おなかに小さな穴」をあけ、チューブを通して栄養を入れる方法です。

iryou_irou経鼻胃管法とは違い手術を要しますので、造設の際には医師から十分な説明があります。当然、家族が同意しなければ手術する必要はありません。

手術自体は内視鏡で15分程度、費用も1万円ほどです。出血もほとんどありませんので、比較的簡便な手術に該当します。

 

メリット

◆身体的負担が少ない 不快感が少ない
◆誤嚥による肺炎が少ない
◆経口摂取との併用が可能
◆不要になれば抜去が可能
◆栄養状態が改善される

経鼻胃管法とは異なりチューブが通っていないため、違和感や苦痛はありません。さらには、口腔内や食道に邪魔者がないため、嚥下訓練ができます。場合によっては経口摂取できるほどに機能が向上することも。

不要になれば抜去することも可能です。ただ、急に外すことはありません。例えば「栄養剤70%/経口摂取30%」から始め、次第に経口摂取の割合を増やしていきます。そして、経口摂取で十分に栄養摂取ができると見込める場合に外します。

また、胃ろうを造設したことにより栄養状態が良好に向かうケースが多くあります。それまでは長時間かけて少量しか摂取できないため痩せ細っていた方が、胃ろうによって必要な量を体内に取り込めることが可能となるためです。

 

デメリット

◆体力の低下した方に造る場合が多く、造設後、死亡に至ることがある
◆自己抜去の恐れがある
◆医師による定期的なチューブ交換が必要
◆口腔衛生を徹底する必要あり
◆在宅での家族負担は大きい

経口摂取できないほどに体力が低下している方が造設しますので、それが起因となって死亡に至るケースがあります。

また、3~6か月スパンでのチューブ交換を麻酔無しで行います。当然、疼痛が強く出血も見られ、その後に自己抜去の恐れもあります。

勘違いされている方が多いのですが、胃ろうにしたからと言って誤嚥性肺炎が100%防げるものではありません。徹底した口腔ケアが必要になります。

日に3回の口腔ケアや痰の吸引に加え、機材の消毒を徹底する必要があるため、在宅で介護する家族の負担は相当なものになります。これを理由に施設入所を検討される方も大勢いらっしゃいます。

 

胃ろう造設法のまとめ

1度造設すると長期間使用するケースがほとんどです。自己抜去や定期的なチューブ交換など、本人の負担は多少なりともありますが、普段の生活で違和感を感じる訳ではありません。

老人ホームの方針にもよりますが、胃ろう患者の嚥下訓練を実施している場合もあります。それによって最終的に毎食口から召し上がるまでに回復されたケースも見られました。

胃ろうについても一長一短あり、医療・介護関係者のあいだでも「胃ろうは善か悪か」という議論があります。

「胃ろうなんて本人の声を無視した医療行為だ!」
「衰弱している人が確実に栄養を摂取できるのよ!」

色々な声がありますが、大切なのは『胃ろうの使い方』です。

まずは本人(家族)の意向。胃ろうを不要な延命と考えているのか。少しでも長く生きるための手段として考えているのか。

そして、胃ろうを造設することで、どのような効果が得られるのか、どのような生活になるのか。それが本人(家族)の考えに沿うものなのか。

正解はありません。

最後に、とある医療講演での印象的な話を送ります。

『「コンタクトを使って目が傷ついたから眼鏡に変えた。」これはコンタクトという医療技術に問題があるのではなく、使い方に問題があっての結果。したがってコンタクトの是非を問うものではない。胃ろうについても同様です。』

大切なのは、なぜ使うのか、どのように使うのか。