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遠方に住む高齢になった親御さんの生活を心配する相談は頻繁に来ます。定期的に電話連絡はしているものの、久しぶりに家に行ってみたら屋内は散乱しており尿臭もあったというケースが最近もありました。

生活は成り立っているか、何かあっても急に駆けつけられないなど、不安は巡ると思いますが、果たしてこのまま離れた生活を続けても良いのでしょうか。もちろんご本人と家族に明確な意思があるならば構いません。しかし、この辺をしっかりと詰めなければ緊急時などにバタバタすることになるでしょう。

今回は、遠方に住まわれている親がいらっしゃる家族が安心できるための心構えや、やるべきことをご紹介します。

 

ケースの概要

以下が、実際に相談を受けた事例の概要になります。

【ケースの概要】
◆Aさん(父)   80歳
◆Bさん(母)     77歳  夫婦2人暮らし
◆Cさん(長男) 55歳

A・BさんとCさんは車で8時間も離れた場所に住んでいます。Cさんの仕事が休みの時などには電話を入れて様子の確認をされているそうですが、Bさんの声色が変わってきていることに気が付いたCさんは、連休を利用して帰省しました。

すると、屋内は服やゴミで散乱しており、夫婦ともに痩せ細っていました。以前は食事の調達や調理は全てBさんが請け負っていましたが、それをする気力が無いらしく、それは不思議とAさんにも波及したそうです。

半年前に会った時とはあまりに変わり果てた姿にCさんも茫然。週明けに包括へ連絡し、両親に必要なサービスの導入をしてほしいと依頼がありました。その際Cさんは、バタバタ慌ただしく動きそうな気配を感じとっていたのか、両親を自分の住まいの近くにある老人ホームへ入居させようとも考えていました。

このようなケースは非常に多くあります。今回の場合は定期的に連絡を取っていたため、異変を感じてすぐに対応できましたが、自立していた人が寝たきりに近い状態となってから家族に発見された事例もあります。

このケースの場合、Bさんの発熱からこのような事態に発展したそうですが、幸いにも軽い症状でしたので経過は良好でした。ただ、Cさんの立場から考えると、今後の夫婦2人での生活に大きな不安を抱えることになるでしょう。何かあればまた8時間かけて会いにいく手間が掛かります。

遠方に親がいる場合、どのような点に留意しておく必要があるでしょうか。

どのような「最期」を迎えるか事前に話し合っておく

ここが最も大切な部分であり皆さんが疎かにしていることです。事が起きてから慌ただしく動くことが無いよう、色々と決めておく事項があります。

【決めておく事項】
◆いつまで自宅での生活を続けるか
◆介護が必要になった場合どうするか
◆老人ホームに入居するタイミング(検討しているならば)
◆緊急時の対応方法
  など

ほとんどの方は事例のように何かあった時に「どうしようか…」と動き始めます。それでも何とかなりますが正直言うと遅いです。必ず事前に済ませましょう。これはバタバタしないようにする以外にも、ご本人や家族たちの意向を最大限に実現させることへ繋がります。

私の持論ですが老い支度は元気なうちにしか出来ません。介護が必要になった段階では現状に合わせた選択しか出来ず、幅は自ずと狭くなります。介護を受けるタイミングは人それぞれ異なりますので、直面しなければ判断できない部分もあるでしょう。しかし、最低でも「介護が必要になった場合にどうするか」だけでも話し合っておきましょう。

 

在宅でそのまま生活を続ける場合

例えばこのケースであれば、A・Bさん双方に介護保険の申請を行い、サービスを受けながら生活を続けます。当然ケアマネジャーも付きますので、連絡事項があれば適宜Cさんに電話がくるでしょう。

サービスが入ればとりあえずは安心した生活が確保できますが、救急搬送などの緊急時には呼び出しが掛かる場合があります。夫婦どちらかに駆けつけ人としての能力があればCさんが出向く必要はありません。しかし加齢とともに難しくなり、Cさんの仕事は増えるでしょう。

夫婦どちらかが亡くなった時のことも考えておく

夫婦が同じタイミングで逝去されることはほとんどありません。必ずどちらかが残される形になります。身内としては残された側が1人で生活していくことも含めて考えなければなりません。

高齢者で独居となると様々なリスクも生じてきますし、緊急時の対応は遠方にいる家族になります。先ほどのケースならば、搬送など何かあるたびにCさんが出向いたり対応する羽目になります。

もし在宅サービスを利用しながら夫婦だけで生活させるのであれば、こういった面にも配慮した方が良いでしょう。体が思うように動かなくなり、認知症を発症してから別の土地に移るとなると、高齢者にとってはかなりの負担になります。

(リンク)老人ホームは「最期に至る前」の安心・安全を確保できる

 

近くの老人ホームへ入居させる

思い切って早めの段階で近くの老人ホームに入居させることも1つの方法です。住み慣れた家を離れる不安や寂しさは当然あるでしょうが、身内の近くに引っ越すことで双方にメリットが生じます。

1番のメリットは日頃の様子を常に把握できる(してもらえる)ことです。また、何かあってもスピーディーに対応してもらえる安心感は親としても大きいでしょう。

また、介護保険などのサービスを利用し始めるとケアマネジャーとの連絡や連携がある程度発生します。書類のサインなど細かい作業もありますが、遠方だとやはり難しい部分が多いです。近くであれば関係者と直接顔を合わせての連携を図ることができます。どのような人が親にケアを行っているのか、自分の目で見ることが出来るのは家族としても安心でしょう。

 

入所できる施設はいろいろ

思い切って近くの老人ホームへ入居させようとお考えであれば、まずは施設探しから始まるでしょう。しかしどういった施設にすればよいでしょうか。

夫婦揃っての入居なのか、単身なのか。あるいは夫婦で健康状態に違いがあるかなどによって選択肢は変わります。それぞれの状況によって適切な施設は異なりますので参考にしてください。(各枠とも私のオススメする順に上から並んでいます)

【同じ健康状態の夫婦が入居】あるいは【単身で入居】
◆ケアハウス(自立~要介護1相当まで)
◆介護付有料老人ホーム
◆サービス付き高齢者向け住宅
◆住宅型有料老人ホーム

 

【認知症を発症している】

◆グループホーム
◆介護付有料老人ホーム
◆サービス付き高齢者向け住宅
◆住宅型有料老人ホーム
◆特別養護老人ホーム(要介護3以上の認定が条件)

 

【健康状態の違う夫婦の入居】

◆サービス付き高齢者向け住宅
◆介護付有料老人ホーム(自立から入居できる対応なら尚良し)
◆住宅型有料老人ホーム

このように、親の状況によって選ぶべき施設が少しずつ変わります。ケアハウスであれば収入によって変化しますが、月額10万円ほどで入居できます。そのため遠方から呼ぶ際にケアハウスがよく選ばれています。

しかし、比較的自立していることが前提になっていますので、介護が必要になると転居する必要があります。普通の引っ越しと同様に家具の搬出などを行いますので面倒です。そのため、金銭的にひっ迫していないのであれば、介護付有料やサ高住などの終身で入居できるタイプを選んだ方が良いでしょう。

 

A・Bさんのその後

取りあえず介護保険の申請をしてサービスを利用しながら自宅で生活することになりました。デイサービスやヘルパーを利用していましたが、Bさんの精神面が少し不安定になり自宅で生活することが難しい状況になります。

ケアマネジャーから定期的に報告を受けていたCさんは心配になり、結局はCさん宅の近くにあるサ高住に夫婦で入居しました。提携している精神科にBさんを受診させると、疲労から来るうつ症状だったらしく、服薬によってすぐに治ったそうです。(Aさんも同様に受診しましたが、原因は不明とのことで現在も治療中。)

買い物はヘルパーに頼んでいますが、それ以外は全て夫婦で自立して行っているらしく、リハビリ目的で週2回デイサービスに通うことで活動的に過ごされています。

夫婦で月40万円ほどの費用になっているそうですが、預貯金にある程度余裕があるので、あとは終身まで生活できるとのことでした。