Pocket

色々な方からの相談を受けていると身内との関係が希薄化していると感じます。入居する際の身元保証人欄を埋めることが出来ずに困っている方が多いです。

最近では施設の相談員や施設長などの立場の方たちから、入居者の身元保証の件で相談を受けることが増えてきました。入居した当初は本人の判断能力がしっかりあったので保証人なしで入居を受け入れたが、次第に認知症を発症したため、契約行為や金銭管理が上手く出来ず、かといって連絡の取れる身内が不在なので、どうにも事態が進まない、といった内容です。

頼れそうな身内がいない方が老人ホームの入居を検討しているのであれば、必ず後見人やその他の社会資源を活用して代理人を立てておく必要があります。アナタがしっかりしている時は良いですが、認知症を発症してからでは施設に多大な労力を掛けてしまいかねません。

今回は、身内のいない方が終身で入居した介護付有料老人ホームにて20年以上後に認知症を発症した女性の話です。この方は代理人の準備をしていなかったため、施設側がバタバタと慌ただしく調整しました。

失敗談になりますので、皆さまは同じ過ちを犯さないよう参考にしてください。

 

ケースの概要

以下が、実際に相談を受けた事例の概要になります。

【ケースの概要】
◆Aさん(本人) 96歳 70歳頃に介護付有料老人ホームへ入居

Aさんは周りに身内がいなかったものの、判断能力は正常だったため契約などを全て1人で済ませて入居した経緯がある。以降全ての契約行為などを自力で行っていたため施設側も特に何も言わずにいた。

しかし、ここ最近になってAさんに認知症のような症状が出現。介護保険の申請などを行うよう施設側から提案するも頑なに拒否。また、居室に現金が数千万円単位で入っており、紛失や、それを他者へ責任転嫁させるのではないかとスタッフも心配している。

施設側としても、身内経由で物事を進めることが出来ず、Aさんの死後のことについても不明瞭な部分が多いため、成年後見人をつけて対応していきたいとのことで施設長から相談を受けたケース。

相談を受け最初に思ったのは、「身内不在で後見人も立てていない高齢者を、よく施設が受け入れたな」ということでした。通常であれば、有事に連絡できる人を設定しておく施設がほとんどです。

Aさんと施設は、入居の際に済ませておくべき大切なことを蔑ろにしたせいで、いま大変な目にあっています。

健康のまま死ぬ保証はありません。だからこそ万が一に備えて代理人をつけておく必要があります。方法は色々ありますので、予め準備してから入居できるよう、皆さまは気をつけましょう。

(リンク)身元引受人に求められることは?

 

その① まずは身内がやっくれる範囲を確認する

全くいない、あるいは頼るつもりが無い方であれば不要ですが、順番としてまずは身内に、どこまでやってくれるのか意向を確認しましょう。

死後の引き取りや医療面の同意などは身内でないと難しい部分があります。受け入れる施設としても、ここが宙ぶらりんな人を積極的に受け入れたくはありません。

後見人などの制度もありますが、身内がある程度引き受けるなら利用するまでもないことがほとんどです。そのため、まずは心当たりのある親族へ聞いてみましょう。

入院や緊急時などの連絡を受けても良いのか、亡くなった後の骨の処理だけ引き受けてくれるのか。または、定期的な連絡まで受けても良いのか。大切なのは施設側に「〇〇という親族が△△までやってくれる」という所まで伝えられるようにすることです。もし誰もいない場はその②・③へ移ります。

 

その② 後見人をつける

その①を実践してみた結果、もし協力的な意向が聞けなかった場合は後見人をつけた方が良い場合があります。

(リンク)成年後見制度とは

成年後見制度には『法定後見』と『任意後見』という2つがありますが、この記事を読まれている方であれば認知症とは程遠い状態でしょうから、ここでは『任意後見』についてお話しします。

これは「判断能力を有するうちに契約を済ませ、その能力が低下した時点で後見が発動するもの」です。元気な今のうちに後見人に頼みたい内容を伝えて契約を行い、判断能力が衰えた時点で効力が発動。任意後見人が決められた契約に従って動いていく制度となります。

これを活用すれば契約行為や金銭管理、その他の事務手続きなどを代行してもらうことができます。Aさんも、入居前にこの制度を活用しておいた方が良かったでしょう。

(リンク)成年後見制度(法廷後見)とは?

(リンク)成年後見制度(任意後見)とは?

 

任意後見は死後の手続きも依頼できる

後見人というのは「本人が生きている間の代理人」という考え方です。そのため亡くなった後の手続きに関してはノータッチです。そこは家族などが行う部分となります。

しかし、葬儀などを執り行う家族がいない場合もあります。法定後見であれば、そういったケースに対してはやむを得ずという形で、あくまで後見人の善意で行ってくれる場合があります。しかし、あくまでルールの外になりますので、「死んだあとは知りません」と投げる方も当然いらっしゃいます。

任意後見人であれば、その心配もなくなります。『死後事務委任契約』という亡くなった後の手続きや代行業務を任意後見契約とは別に取り交わすことが出来ます。

そのため、もし身内がいないことで入居を戸惑われている方は任意後見制度を利用し、かつ死後事務委任契約も併用することで最期の手続きまで代理人が行ってくれる体制を確保することが可能となります。

任意後見制度を活用される場合に費用は以下の通りになります。

【任意後見制度の費用】 ※あくまでも目安です

◆申し立て費用…20万円
◆任意後見人への報酬…2~5万円/月
◆任意後見監督人への報酬…1~2万円/月

 

その③ 身元保証サービスの活用

後見人以外にもアナタの代理人として施設と連携したり、手続きの代行をしてくれるサービスがあります。それが「身元保証サービス」です(名称は会社によってマチマチです)。

親戚関係の希薄化によって身元保証人を設定できない方が増えているため、このようなサービスが各地で設立されています。特徴としては保証人として施設の契約書に名を連ねること以外にも、事務手続きの代行や緊急時の駆けつけ、あるいは後見人には出来ない医療面の同意・手続きなど身内のいない方を包括的にサポートするサービスです。

必要であれば葬儀の代行も執り行ってくれるため、1度契約すればあとは全て会社に任せっきりで大丈夫です。後見人より手厚い身元保証を受けられる点に大きなメリットがあります。

 

任意後見より高額

包括的なサポートが受けられる点に大きなメリットがありますが、その分費用も高くなります。一般的な身元保証サービスの費用と項目は以下の通りです。

【身元保証サービスの費用】 ※あくまでも目安です

◆入会金…25万円
◆事務管理費…5万円
◆会費…35万円
◆身元保証料…35万円
◆万一の支援…15万円
◆葬儀代行費…35万円

これら全てを合算すると145万円になります。葬儀を行う家族がいるのであれば該当から外れる項目もありますが、基本的には契約の時点で100万円~150万円ほどは必要になります。

その後のランニングコストも月1~3万円ほど必要になりますので、決して安い金額とは言えません。しかし、こういった会社は弁護士や司法書士、税理士やFPなどがチームとなって案件に対応しますので、安心感は後見制度よりも大きいでしょう。

 

Aさんのその後

相談を受けた時点で既に認知症を発症していたため「法定後見」にて後見人を立てることにしました。ある程度の判断能力は残されていたため「本人申し立て」という形で進めることとし、家庭裁判所へ申し立てる為に必要な書類作成については(リンク)リーガルサポートという司法書士団体が行っているセンターへ依頼します。

2カ月ほどで家庭裁判所から「保佐人」が任命され、すぐに金銭管理と溜まっている手続きに着手してもらいました。

現在では施設も安心してAさんの受け入れを継続しているそうですが、それまでは何かあった時の連絡先も定かではない状態でした。保佐人が動くようになったことで有事の連絡手段が確保されましたので一先ず安心です。

亡くなった後の葬儀などについては保佐人の方でもう1度親族を洗い出し、交渉していくとのことでした。

本来であれば入居する時点で済ませておくべき内容でしたが、今まで放置したせいで周りがバタバタとしました。Aさん自身そのような自覚はありませんが、皆さんは同じことが無いよう予め準備しておいてください。

緊急時の連絡先や亡くなった後の葬儀執行者など、しっかりと準備を整えることが安心した生活に繋がりますし、素晴らしい『老い支度』になります。

(リンク)「身元保証人不要」という謳い文句は本当か?