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認知症高齢者の介護で問題となるのが「徘徊」です(個人的には使いたくない表現ですが…)。

本人には目的があって外出するのですが、出て行ったっきり戻れなくなることも多々あります。

以前ニュースでも取り上げられた、認知症高齢者の列車事故もそうですが、外出して何かトラブルを起こすことが十分に考えられますので、介護者も気を緩めることが出来ません。

人によっては日中夜関係なく出掛けてしまうため、心身共に辛いものでしょう。

 

今が1番大変な時期です。どのような備えをすべきかお伝えします

今回は、徘徊をする父親を介護する息子から受けた相談についてご紹介します。

認知症に対するサービス・制度が不十分ななか、このような症状に対して、どのような点に注意したら良いでしょうか…。

介護する家族が潰れてしまわないよう、心構えについてもご紹介します。

 

 

ケースの概要

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以下が、実際に相談を受けた事例の概要になります。

◆Aさん(本人) 85歳 男性 要介護3 
◆Bさん(息子) 62歳   親子2人暮らし

Aさんは認知症を患っており排泄などにも部分的な介助が必要な状態です。

デイサービスへ週2回利用する以外は息子のBさんが介護をしている。

Aさんは外へ頻繁に出かけており、警察に保護されたことを機に私たちも関わり始めました。

Aさんは時間帯に関係なく、夜中でも玄関に足を運んだり、ふと目を離した隙に窓から出ようとするなどの行為があるため、Bさんも他の用事が進みません。
 
トイレ以外でも排泄することが増えてしまったため、Bさんの負担は重くのしかかります。

面談でも「常に父のことを考えていなければいけない。緊張感から夜も十分に眠れず、保護されるたびに警察署へ行くのも嫌になってきた。」

「辛い…。外へ出てそのまま誰にも見つからないでほしいと思うことがある。」と漏らしていました。

老人ホームも考えたそうですが、「なるべく自分が面倒を見ていきたい」という思いから、何とか踏ん張っているそうです。 

Bさんは父親の介護のため早期退職しました。他に頼れる親族もいなかったため、週2回のデイサービス以外は全て引き受けていました。

このような症状のある方を1人で介護するのは、あまりにも大変です。Bさんも、よくここまで介護していたと思います。

ただ、このままでは介護者が潰れてしまいます。本当に難しい問題ですが、私は以下のポイントを心構えとしてお伝えしました。

 

その① 今が1番大変な時期

親の介護に疲れ果てている女性

本人の体が自由に動く時が1番大変です。

「体が元気な認知症」の介護は目を離すことができないため、ドタバタと慌ただしくなります。

一息する暇もないくらい忙しいため、精神的に病んでしまう介護者が続出するのも、このタイミングが多いです。

無理は禁物です。

「親の介護量」 > 「自分の介護力」

この構図になったら無理をせずショートステイなり施設入所をしましょう。

これには客観的な判断が必要ですので、日頃から関わっているケアマネジャーやヘルパーなどに判断を仰ぐのが良いです。

 

このタイミングでサービスの見直すのも手!

パズルを組み合わせる男女のイラスト

あるいは、このタイミングでサービス調整するにも手です。

◆デイサービスの回数を増やす
◆ショートステイを利用する
◆夜間も対応可能な定期巡回・随時訪問サービスを利用する  など

サービス調整をすることで、辛い時期を乗り切る方法もあります。

特に泊まりサービスは介護者の休息に大きく貢献してくれます。

ただ、「近くに空きのあるショートステイが無い!」という場合も考えられます。

こういった場合には有料老人ホームなどの一時入居(ショートステイ)を利用するのも良いでしょう。

一時入居(ショートステイ)可能な老人ホームを探す

1拍1万円弱と、特養や老健のショートステイより割高にはなりますが、背に腹は代えられません。

受け入れ先が無かったときの保険として、有料老人ホームなどの一時入居先も確保しておくと、精神衛生上さらに良くなります。

 

 

その② まずは人命を優先

出掛けたっきり帰宅できず最悪の場合、死体で見つかるケースがあります。

私が担当する地域でも同様のケースが年間で1~2件ほど発生しています。

それ以外にも、人や物に危害を加えてトラブルを起こしたり、事故によって賠償責任が問われる事態になることも十分に考えられます。

ですが、目が離せない高齢者を付きっきりで介護するのは負担が非常に大きいです。

そのため、まずは「人命を最優先」して下さい。

外へ出ることで本人や周囲に危険を及ぼすのであれば、鍵をかける等の行動制限もやむを得ないと個人的には考えています。

 

専門職と家族では優先順位が異なる

施設での介護に悩む女性

施設の職員が徘徊する入居者を介護することとは状況が違います。

施設スタッフの場合…

◆交代制で介護する
 ◆介護することで給与が得られる
 ◆勤務時間外はプライベートが確保されている

対して家族介護の場合

◆基本1人で介護する
◆介護に終わりが見えない
◆介護に追われプライベートな時間が確保しにくい

少し挙げるだけで、こんなに違います。

そのため、優先順位も異なります。

家族介護の場合、まずはAさんの人命・Bさんの健康が最優先です。

極論かもしれませんが、自分の身を守る意味でも、鍵を掛けたり閉じ込めることは必要な時があり、こういった行為を悪だと私は思いません。

 

 

その③ 薬の調整に頼らないほうが良い

薬使用しない

Aさんは物忘れ外来に通院して認知症の治療薬と少量の睡眠薬を処方してもらっていました。

薬を変更してもらったことが何度かあったそうですが、特に変わりがなかったということで、今の内容に落ち着いたそうです。

Aさんの場合、必要最低限の処方に留まっていましたが、なかには睡眠薬を多量に追加して調整しようと考えるご家族もいらっしゃいます。

ここで注意してほしいのが、睡眠薬の調整は非常に難しく、処方だけで徘徊やそのた症状を和らげることは基本的に出来ないということです。

症状と薬がピッタリ合えばガラリと変わることもありますが狙って出来るものではありません。そのため主治医も処方に対して慎重です。

認知症による被害妄想を服薬の調整で回復させたケース

 

薬の成分は体内で蓄積され、後から効いてくる

目を離すことが出来ない状態の高齢者に対して、精神薬や睡眠薬の投与を続けた結果、寝たきり状態になったケースがありました。

いくら服用させても効果が見られないため、主治医に相談して次々と強い薬を処方してもらった結果です。

精神薬などはすぐに効果が出るものではありません。

2週間以上は経過観察が必要なものですが、何故か強い薬を次々と出したため、体内に蓄積された成分が一気に効果を発揮したのでしょう(あくまで私の予想ですが…)。

こういった見極めというのは非常に難しく、私たちも主治医と相談しながら慎重に進めていく事案です。

また、徘徊や認知症の症状というのは薬の調整だけでどうにか出来る問題ではありませんので、その点にご注意ください。

 

 

その④ 備えとして「候補の老人ホーム」を探しておく

検索エンジンを使う男性のイラスト

サービス調整や服薬調整、自分を最優先に置いた介護など可能な限り行った後、やってほしいことがあります。

それは、「備えとして老人ホームを探しておく」ということです。

こういったケースの場合

◆外出先で転倒などの怪我で入院
◆介護者が倒れる  など

ある日、事態が急激に動くことが頻繁にあります。

ほとんどの場合、老人ホームに入居するのですが、失敗談として聞くのが

「どうせ入るなら自分(親)が良いと思える施設が良かった」

という声です。

バタバタと慌ただしく対応に迫られますので、入居先の施設をじっくり検討している余裕がありません。

「いま大変だから入れるならどこでも良いや」

と、その場凌ぎで老人ホームを決めてしまうと後悔してしまいます。

そのため、候補となる老人ホームは今のうちに絞っておくことをお勧めします。

そうすることで、慌ただしくなっても「〇〇に入る手続きをしよう!」と方向性がブレずに動くことが出来ます。

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Aさんのその後

私の助言を聞いたBさんは近くのグループホームに目星をつけ、最終的には相談から8カ月後にAさんが入居しました。

サービス量を増やして対応していたそうですが、日に日に症状が悪くなるAさんの様子にBさんも限界を感じていました。

これを間近でみていたヘルパーが「これはもう限界だろう」と察知し、ケアマネジャーとBさんも集まり、今後のAさんについて話し合うことに。

ケアマネの「施設でもAさんの面倒は見れるんですよ」という言葉に後押しされ、グループホームに入居させることを決意しました。

今ではパート勤務ながら社会復帰をされたBさんの表情は明るく、毎日のようにAさんのもとに通いながら元気に生活されているそうです。

(リンク)認知症によって徘徊してしまう人に出来ること