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実際に私の地域包括支援センターへ相談に来たケースを紹介します。

今回は認知症により施設を拒んでいる母をどうにかして入居させたい話です。

こういったケースは非常に多く見受けられます。

家族だけでは難しい問題ですので、周囲も巻き込みながらの対応が望ましいですが、留意すべきポイントや、その後の経過について紹介しますので、皆様も是非ご参考にしてください。

 

無理やり入居させるのはダメ?家族が潰れないための心構えをお伝えします!

こういったケースと関わっていると

「無理矢理入れるのはダメなのか?」
「このままだと私たちが先に疲弊して倒れてしまう…」

など家族が疲れ切っている様子が伺えます。

このような事例に対してご家族がどのような心構えでいるべきなのか。私なりの考えをお伝えできればと思います。

 

 

ケースの概要

以下が、実際に相談を受けた事例の概要になります。

◆Aさん85歳 女性 1人暮らし 要介護3(週6回ヘルパー利用)
◆Bさん50歳 長男 近隣の市区町村に在住 

息子のBさんは仕事が休みの時はお米など重たい買い物を手伝ったりなど協力的です。
 
ただ、Aさんは認知症により服薬忘れや、鍋を焦がす、現金や通帳を紛失するなど様々なトラブルを起こしています。

Bさんもさすがに1人暮らしは限界であろうと思い、担当のケアマネジャーとも協議した結果、近くの介護付有料老人ホームへ入居してもらおうとなりました。

そのことをAさんへ伝えると「私はこの家で最期まで生きていたい。」「施設はボケ老人が行く所だから絶対に行かない」と強い拒否を示しました。

本人の意思を尊重し、このまま様子を見ていくことになりましたが、日に日に認知症状が進んでいきます。
 
対応にも疲れ限界に近いながらも、Aさんが入居に強い拒否を示すので、このままではBさんが先に倒れてしまう。どうしたら良いか。

老人ホームへの入居を拒否する高齢女性

認知症状により1人では到底生活できるレベルでは無いながらも、Aさんの意思を尊重して、何とか自宅での生活を続けていました。

しかし、度重なるトラブルにBさんや周囲も疲弊しています。
 
老人ホームを勧めるも本人が頑なに拒否するケースは頻繁に見かけます。こういった場合、どのようなポイントに留意したら良いでしょうか。

 

その① 入居を拒否するのも症状の1つと考える

Bさんは母の意思を尊重して可能な限り在宅生活を続けようとしています。

本人の口から「施設には入りたくない」と強く言われると、本心と思い入居を踏み留まる家族も多くいらっしゃいます。

しかし、ここで注意してほしいのが「入居を拒むことも認知症状の1つである」ということです。

認知症を患っている方は何かが変化することを嫌がります。周囲の環境や普段使いしている物など、何気ない変化に敏感です。

そのため「施設に入る=今までの生活が崩れる」と考えてしまいます。

(リンク)認知症の症状と心掛けてほしいこと

怒っているおじいちゃん

また、Aさんも恐らく自身の異変を薄々感じていたことでしょう。しかし、実際は認めたくありません。『自分は正常である。普通の高齢者なんだ』と。

老人ホームへ入居を認めると、異変を認めることになります。そうならないために必死で拒んでいるという側面もあります。

そのため、ご本人の言葉をそのまま鵜呑みにしないよう注意してください。これを続けるとBさんのように疲弊してしまいます。

 

 

その② 決定権はアナタにある

ご本人が認知症を患っている場合、老人ホームへの入居決定権を持っているのアナタです。ご本人ではありません。

このケースのように、今の生活をズルズル続けていると、互いが疲れ果てて不幸な結果になってしまいます。

双方の幸せを願うのであれば、あなたが心を鬼にする必要があります。

本人がどれだけ「嫌だ」と言っても施設へ連れて行く強い意志が必要です。

大切なことなのでもう1度言います。認知症を患っている場合、決定権はアナタにあります。

 

本人の意思に反して入居させても違法にならないか?

嫌がるおばあちゃんを強引に連行する

嫌だと主張する本人の意に反して勝手に入居させても良いのか?家族としては心配だと思います。

第3者の後見人が着任しているケースなら、「下手なリスクは避けたいな」という思いから『本人の意志を尊重するべき』と言うでしょう。

後見人は「本人の意思の代弁」が業務の1つです。そのため、いくら認知症とはいえ本人の言葉を無下には出来ません。

しかし、これが家族なら問題ないと私は考えています。

家族が認知症の身内を強引に入居させることに関して法律上、明言はありません。

そのため「自分たちの生活を守るために親を入居させた」という明確な理由があるなら、誰が違法と唱えるでしょうか?

さきほども言いましたが、決定権・主導権はアナタにあります。

 

「本人」と「家族」どちらを取るか

家族と本人の両天秤

「本人と家族どちらを取るべきか迷う」ケースは多々あります。

双方が幸せになれる道があるなら、それを選ぶべきです。

もし、片方しか選べない場合は「支える側の家族をとる」ようにして下さい。

支え手の家族が潰れると、本人も潰れてしまいます。

だからこそ家族が平常を保てるような天秤のかけ方をしてください。

 

体験入居やショートステイから徐々に慣らしていくのも方法の1つ

新設の老人ホームと高齢者たち

拒否が強い人にいきなり本入居させるのはハードルが高いかも知れません。

そういった時には

◆体験入居
◆ショートステイ

こういった手段も有効です。

施設スタッフもプロですので、認知症の方が心地良くなるケアを提供できます。

意外に多いのですが、散々「嫌だ!」と拒否していた人が体験入居が終わると「楽しかった♪」と満面の笑みを浮かべています。

徐々に慣らしながら入居へ気持ちを向かせられたらベストですよね。

体験入居が出来る老人ホームを探す

 

 

Aさんのその後

老夫婦と家族のイラスト

入居を強く拒んできたAさんは結局、私たちが介入しても事態は変わりませんでした。

これ以上サービス量を増やすことが出来なかったので、家族も含めた関係者で連携しながら定期的な訪問による情報収集や共有に徹しました。

鍋を焦がす心配もありましたのでBさんがIHのコンロを購入し、更には自治体で支給されている自動消火装置(煙を探知すると水が出るもの)と併用することで火の不始末を防ごうとしました。

また、以前から話をしていた介護付き有料老人ホームへ再度話を通しました。施設側も事情を汲んでくださり「いつでもご連絡ください」と仰っていただきました。

それから2か月後、Aさんの認知症状が悪化。

「泥棒が私を狙っている」などの被害妄想が出現。ケアマネジャーから報告を受けAさんの自宅へ伺うと確かに同様の訴えがありました。

Bさんからは「入居できるならばいつでも構わない」と事前に了承は貰っていたため、Aさんに対して

「泥棒が狙っているなら非難しましょう。ここは危険です。安全な場所へお連れします。」

と伝え、連携していた老人ホームへ車でお連れしました。

結局そのまま入居となり、連絡を受けたBさんも後から施設へ到着。無事Aさんの安心して生活できる場が確保されました。