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認知症の症状の1つとして被害妄想があります。物盗られ妄想や紛失物を隠した、男女の交際に関連する事など症状はさまざまです。

老人ホームなどであれば介護スタッフがケアによって症状を和らげていきますが、今回は自宅で介護をする家族が、ケアマネジャーや医師と協力して症状を落ち着かせたケースについて紹介していきます。対応に追われて本来やるべきことが見えなくなってしまう家族も多くいらっしゃいます。これから説明していくケースの対応方法などをヒントにして頂けたらと思います。

(リンク)【お悩みコラム①】施設を拒む認知症の母を入居させるには

(リンク)ケアマネジャーをつけるには?

 

ケースの概要

【家族構成】

Aさん(本人)  70歳 認知症の診断を受けている
Bさん(夫)    73歳  心身ともに元気
Cさん(長女)  40歳代  近隣市に在住

【ケースの概要】

夫婦2人でお元気に暮らしていましたが、3年前にAさんが認知症を発症。夫であるBさんが見守りをしながら生活を続けていましたが、「あの人は他の女と関係を持っている。私は不用品なんだ!」と男女関係の被害妄想が出現するようになりました。

Bさんや、他市に住んでいるCさんが落ち着かせるよう声を掛けますが、症状は次第に悪化。受診していた認知症疾患医療センターの医師から処方された服薬に対しても「あいつ(Bさん)が毒を盛っているから絶対に飲まない。飲んだら殺される!」と頑なに拒否。

週3回デイサービスに通っていましたが、それ以外の時間は終始Bさんに対する被害妄想を訴え続け、Bさんの疲労もピークに。

服薬もせず、ついには病院へ通うことにも拒むようになりました。

ただ、落ち着いているときのAさんの言葉として「夫のことが好き。一緒にいたい」という意向があり、それはBさんも同じでした。出来ることなら2人での生活を続けていきたいとケアマネジャーやCさんも考えましたが、まずは症状を落ち着かせないことには何も始まらない状態です。

認知症疾患医療センターへ受診していたものの、処方された薬を飲めなかったため、被害妄想が悪化しました。ケアマネジャーも「自分の力だけではどうも出来ない…」ということで地域包括支援センターに相談されたそうです。

(リンク)【お悩みコラム③】夫がデイサービスを拒否するため自分の時間が持てない

 

訪問医に診てもらう方向へチェンジ

受診することにも拒否を示すようになったため、治療が全くと言ってよいほど進まなくなりました。

認知症に理解のある医師のなかには、本人を診察室へ連れてこなくても、家族などの代理人が症状を伝えることで処方箋を書いてくれるケースもありましたが、今回の場合はそれが難しく、家族やケアマネジャーとも話し合った結果、訪問医に診てもらう選択をしました。

(リンク)訪問診療とはどんなサービスか?

 

薬の内容は変わらないものの、飲み方を変えることに

新たな訪問医に診てもらった結果、薬は今までと同様に「抑肝散」という気持ちを落ち着かせる漢方薬と、「メマリー」という認知症治療薬の2つでした。

ただ、それだけではAさんが服薬できるようになる保証がなかったため、服薬時間についても相談するよう家族にはアドバイスをしました。(今までは夕食後の19時頃にBさんが声を掛けて飲ませようと試みていたそうです)

初回の診察時に立ち会ったCさんから、医師に「父の促しでは飲むことが難しい状況です。上手く飲むための方法はありますでしょうか?」と確認しました。

それを受けた医師の判断は、「デイサービスに通っている時に職員に服薬してもらいましょう。この薬は本来なら寝る前が良いが、まずは飲むことが先決です。15時頃でも構いません。また、毎日が無理でも可能な限り飲ませてください。」というものでした。

ということで、週3回通っているデイサービスにお願いをして、職員の声掛けで服薬してもらうことになりました。それ以外の曜日については、継続してBさんが対応することに。

 

週3回の服薬で症状が改善に向かう

医師のアドバイスを試してから2週間ほどで効果は目に見えてわかるようになりました。

デイサービスの職員が声を掛けると一切拒否を示すことなく服薬をしたそうです。初めの内はデイのある週3回のみでしたが、2週間ほどするとBさんに対する被害妄想が顕著に軽減していきます。

更に良かったのは、症状が和らいだおかげでBさんの声掛けでも服薬できるようになり、今では漏れなく薬を飲んでいます。

私や他の職員も、週3回の服薬で効果が目に見えて出てくることにビックリしました。認知症があるため見守りは継続して必要であるものの、精神的負担が一気に軽減したBさんは今まで以上に精力的に介護をしているそうです。また、忙しい仕事の合間を縫って他市から来ていたCさんも、今では月に1~2度ほど様子を見る程度で済んでいます。

 

「まずは飲む」ことが最優先

今回のケースで改めて思いましたが、まずは「薬を飲む」ということがいかに大切かということです。

ベストな回数や時間は確かに存在します。しかし、それに捉われてしまうと事態は上手く進みません。「まずは服薬するための方策」を優先させます。頻度や時間帯は二の次です。

これに関しては医師と相談しましょう。薬や量を変更したり、飲み薬から張り薬に変えたり、時間を調整したりと、様々な方法を提示してくれます。

次回の診察まで日が空いている場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してみるのも手です。皆さん専門家でありノウハウは蓄積されていますので、解決の糸口となるアドバイスも受けられるでしょう。場合によっては診察に立ち会って家族と一緒に相談に乗ってくれることもあります。

「抱え込まない」。認知症あるいは介護はなるべく複数人で行うよう心がけましょう。

※あくまで「在宅で何とか介護をしている場合」の話です。老人ホームなどに入居している場合や、在宅で複数人がゆとりを持って介護をしている場合は、原則的にケアで症状を和らげます。

(リンク)「認知症の人と家族の会」を積極的に活用しよう!