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認知症の症状の1つに徘徊というものがあります。個人的にこの言葉の使い方は好きではありませんが、現況を把握する能力である見当識が障害されることで、こういった症状が出現します。

老人ホームにも徘徊をする方はいらっしゃいますが、特に自宅で生活している場合に、このような行動があると介護者の負担はかなり大きなものになるでしょう。

目を離すとすぐにどこかへ出てしまい、帰宅することができずに警察に保護される人も多くいらっしゃいます。介護者はゆっくり過ごすことも許されない状況であることが多いです。そのため今回は徘徊をする認知症の人や介護者双方が安全・安心して生活を続けるために出来る策についてご紹介します。

 

外へ出ていく理由を探る

まずは「なぜ外へ出ようとするのか」という理由や背景を探っていきます。(リンク)認知症への対応で大切なことにもある通り、理由によって対応方法が変わってくるからです。

理由によって合わせた声の掛け方をしなければ本人の納得を得ることは出来ません。これを疎かにして片手間でその場限りの対応をしてしまうと、すぐに気持ちが再燃して外出しようとしてしまいます。

「家に帰る」という訴えならば、なぜ今いる自宅を出ようとしているのか探ります。「何言ってんのここがアンタの家でしょ!」なんて言葉は反感を買ってしまいます。もっと安心できる場所を探しているのか、用事を思い出したのか、体を動かしたいのか。その時々で理由は色々ありますので、相手の声にしっかりと耳を傾け、表情を読み取る必要があります。繰り返していくうちに簡単に相手の意図が読めるようになります。根気が必要ですがこの作業を繰り返すよう心がけてください。

「もう外は暗いから今日はここで一泊しませんか?明日の朝一で帰りましょう。」と提案したり、それでも落ち着かない様子であれば一緒に外へ出て散歩することも必要です。少しすれば家に帰ろうとしたことも忘れますので、頃合いを見て帰宅すればよいでしょう。何よりも「相手の納得する言葉や行動を選ぶ」ことが必要であり、そのためには「何で?」を繰り返す必要があります。

(リンク)【お悩みコラム⑤】徘徊を続ける親を見守り続けることに疲れた

 

出ていくリスクを抑える策

声の掛け方以外にも、外へ出ていくことを予防するための策はあります。

≪外へ出ていくことへの予防策≫

①窓、玄関の鍵を手の届かないところに設置する。
②窓、玄関の鍵を簡単には開錠できないものに変える
③センサーを設置し、音やアラームで知らせてもらう

予防策に関しては以上3つがメインになります。①②の鍵を開錠出来ないようにすることは、一見虐待のような捉え方をされるかも知れませんが、家族が自宅で介護する場合であれば私は構わないと考えます。老人ホームでこれをやると役所に通報されてしまいますが、家族や本人の安全・安心を確保するためであれば、多少行動範囲を制限することはやむを得ないでしょう。

また、③のセンサーについては介護保険でレンタルすることも出来ます。感知器は玄関や所定の場所など様々な位置に置くことが出来ますが、ほとんどの場合は玄関に置きます。また、敷くタイプもあり、踏むとアラームなどで知らせてくれるタイプなど種類は多様になっていますので、福祉用具会社に問い合わせると症状などに合わせて適切な商品を紹介してくれます。

 

出てしまってからのリスクを抑える策

もし外へ出た場合に問題が発生することを少しでも抑える策もいくつかあります。

≪出てしまってからの問題を抑える策≫

①持ち物に名前・住所・電話番号を書く
②GPS機能を活用する
③徘徊高齢者SOSネットワーク登録する
④消防団(消防局)へ連絡する

①については保護されてからの対応に役立ちます。当センターにも徘徊高齢者を保護したケースが来ますが、名前や住所、連絡先などの情報がわかるだけで、その後の対応のスピードが全く異なります。持ち物や服のタグ部分など可能な範囲で構いませんので、マジックで書いておくことをお勧めします。

②は色々なサービスが出ていますので、本人の状態に合わせた使い分けが大切です。GPS機能のついたチップが靴底に内蔵されているタイプや、携帯電話で追跡できるもの、セコムなどの民間会社で提供されている徘徊探知機など幅広くあります。本人が肌身離さず持っているものは何か、出掛ける際に忘れずに持っていくかなどを分析し、適したものに織り込むことで外出しても行き先が簡単にわかるようになります。

③の名称は自治体などによってバラバラですが、登録しておくことで行方不明になった際に警察から各関係者へ向けて本人の特徴などを一斉に発信します。当センターにも頻繁に行方不明情報が来ますが、特徴が細かく記載されていますので、非常にわかりやすいです。私も実際にこの通知を見たあと、仕事帰りに対象者を発見したことがあります。

④については知らない方も多いですが、行方不明者の捜索に関しては消防団が一番強いです。その土地の地理などは日頃から練り歩いていますので、迷いやすい・危険な場所などのポイントは把握しています。緊急的な事態になれば警察だけでなく消防団にも併せて連絡するようにしましょう。

 

準備を整え、きっかけを待つ

徘徊の対応で疲れ果ててしまう家族は非常に多くいらっしゃいます。老人ホームへ入居してもらうことも選択肢の1つですが、なかには入居を強く拒否する場合もあり、思うように進まないケースもあります。

本人の自己決定権もありますので、全く無視することは出来ません。かといってこのままでは介護者が潰れてしまいます。ここが1番辛い時期ですが乗り越えなければいけません。1人では絶対に無理ですので、ケアマネジャーやサービス事業所などの関係者と「自宅で少しでも安心・安全に過ごすための方法」について綿密に打ち合わせておく必要があります。

(リンク)【お悩みコラム①】施設を拒む認知症の母を入居させるのはにもある通り、入居を拒む方は無理強いすることが出来ません。こればかりは包括などの専門家などが介入しても変わりません。

このようなケースは「きっかけ」を待つ以外ないです。転倒して骨折したり、認知症状が激しくなったりなどの変化が見られたタイミングを見計らってすぐに入居へ向けて動かします。それを可能とするために事前に水面下で準備を整えておくしかありません。

認知症により入居を拒否する人のタイミングは「きっかけ」ということを覚えておき、それまで安全に過ごせる方法などを関係者で話し合うことが大切です。