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(リンク)成年後見制度とはのなかで基本的なお話をしましたが、今回はそのなかでも「任意後見」についてご紹介したいと思います。

60歳代など比較的若いうちから任意後見を結んでおくことで、老人ホームへの入居に必要な準備を済ませる方も増えています。元気なうちから施設への入居を考えている方は今後利用することも大いに考えられますので目を通しておくとよいでしょう。

 

本人と相手の任意契約

法定後見では判断能力が衰えた人が対象になりますが、任意後見では、それら低下が見られる前にある人が利用できます。また、法定後見では、家庭裁判所へ申し立てることで適任となる後見人が選出されましたが、この制度では本人と相手が直接契約を交わすことで成立します。

元気なうちに契約を済ませておき、判断能力の低下が見られた時点で契約内容に基づいて任意後見が開始されるという流れです。また、開始された段階で「任意後見監督人」という人が選任されます。これは任意後見人が適切な活動をしているかチェックする係です。

そして、どのような行為を任意後見人に移管するかについては当事者間で協議します。法定後見であれば類型によって違いはあれど、財産管理と契約などの身上監護しかありませんが、任意後見では、ある程度自由になっています。ただ実際、ほとんどは法定後見と同じような契約内容になっています。

代理人になれる人

本人と契約を交わすことが出来る人に制限はありません。家族や専門職(弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士)、友人関係など、様々な立場の人が任意後見人になることが出来ます。

ただ、本人との利益関係が相反している立場の人間や破産者は出来ません。本人を相手取って訴訟を起こした事実がある場合や、本人の金銭を適切に管理できそうにないことが予測される人は不適用となります。

また、任意後見人は必ず1人だけというわけではありません。複数人に依頼したり、場合によっては法人に依頼することもあります。複数人や法人が任意後見をしてくれることで、病気や死亡した際などの事情が発生しても別の人でカバーすることが可能になります。

 

用途に合わせて3つの型を使い分けることが出来る

任意後見人に業務を移管するまでの期間は人それぞれです。契約から開始まで10年以上要する人もいれば、数か月で開始に至る人までいます。

なかには開始される前にある程度の内容を託しておきたいと考える人も少なくありません。そのような方に対して柔軟に対応できるように、用途に合わせて3つの型があります。

〇〇型 内容
移行型 契約から開始までの間、予め財産管理や定期的な訪問をしてもらう型です。これを契約内容に入れることで、任意後見が始まる前から上述の対応をしてくれます。判断能力に問題はないものの管理が不安な場合や、「低下が見られる」と確認してもらえることがメリットです。
即効型 契約を結んでからすぐに任意後見を開始する型です。判断能力の低下が少し見られている場合によく使われています。ただ、契約内容を決める時点ですでに理解力に乏しい部分があるので、慎重に進める必要があります。これが難しいならば法定後見を視野に入れます。
将来型 契約を結んでから開始までの間、任意後見人に何も移管しない型です。空白の期間、相手が特に訪問することもありませんので、「判断能力が低下した」と見極める機会が減ってしまいます。近くの家族や老人ホームに入居している場合であれば使い道があります。

ほとんどは金銭管理を移管する「財産管理契約」と定期的な訪問を依頼する「見守り契約」を契約内容に盛り込むことで、より制度を安心して利用することが出来ます。

(リンク)身元保証人がいない場合どうすれば良いか?

死後のことも依頼することが可能

成年後見制度は「生きている時までの支援」となっており、死後の葬儀会社との連絡やお骨の処理については業務対象外となっています。善意でやって下さる後見人が少数ながらいることは事実ですが、ありきで考えることは好ましくありません。

しかし、任意後見制度は本人と相手、双方が合意していればこれら業務を別途の契約書に盛り込むことで移管することが可能となります。これを「死後事務委任契約」と言います。具体的にどのような内容を組み込んでいるのか一例をお示しします。

【死後事務の例】

◆地代、家賃、管理費、医療費などの本人死亡前に負担した債務の支払い
◆衣料品など身の回りの生活用品の処分と賃貸建物の返還に関する一連の作業
◆葬儀・埋葬に関する事務、墓地の選定、供養に関する事務
◆相続財産管理人の選定の申し立て
◆臓器提供、献体に関する事務   など

移管したい内容を契約書に組み込んだあとは公正証書で締結します。任意後見契約と死後事務委任契約を1通にまとめることも可能です。

これを使えば成年後見制度の穴の1つであった「亡くなった後のこと」についてカバーすることが出来ます。老人ホームに入居している身寄りのない方も多く利用しています。

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費用

法定後見のように家庭裁判所へ提出する必要書類はありません。当事者間での契約書作成と公正証書にする際に発生する費用だけです。公正証書にするために1万1千円掛かります。それ以外に収入印紙代などもありますので、計2万円ほどが契約の段階で必要です。

また、任意後見人が活動する際にも報酬として毎月費用が発生します。報酬に関しては契約の際に予め設定していることが多いですが、本人の財産状況に応じて支払いが可能な範囲になります。それ以外にも、任意後見開始前から「財産管理契約」や「見守り契約」などの支援を依頼していた場合には多少の報酬を支払います。これも契約時に決めていることが多いです。

更には、任意後見監督人という立場の人にも報酬を支払うことになっています。任意後見人が本人の為になるような活動ができているか監視していることに対する報酬です。任意後見人よりも少額で済みます。

支払先 報酬(月額)
任意後見人 2~5万円
監督人 1~2万円

法定後見とは異なり、任意後見人に加え監督人が必ず配置され、それぞれに月々の報酬を支払う必要があります。そのため費用負担は法定後見より多くなる傾向にあります。

また、家族が後見人として動くのであれば無報酬であることが多いですが、専門職後見人が担当する場合には『弁護士>司法書士>行政書士>社会福祉士』の順で費用が高くなります。

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