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(リンク)成年後見制度とは?では制度の基礎の基礎についてご紹介しました。判断能力の低下が見られるか否かによって「法廷後見」と「任意後見」に分かれていますが、今回はそのなかでも多くの方が利用している「法廷後見」について詳しくお話ししたいと思います。

 

判断能力に応じて3つの類型に分けられる

本人が判断能力をどの程度有しているかによって、軽い方から「補助」「保佐」「後見」と3つの類型に分けられます。

上述のリンクにもある通り、能力低下の要因となる疾病を診察をしている医師と家庭裁判所の担当官の面談によって類型が決められますが、これによって今後選任される後見人に与えられる権限に差が生じてきます。

これは本人の有する能力を必要以上に奪うことなく、代理人の力を借りながらも残存能力を最大限発揮することを制度の趣旨としているからです。

類型ごとの大まかなレベル

家庭裁判所などのホームページを見ても「保佐類型は判断能力が著しく低下しており…」などと記載されていて実際にどの程度の状態なのか不明瞭です。確かにご本人の病気や症状、性格の関係上、一概には言えない部分が大きいですが、私が今まで経験してきたなかで、類型ごとの状態像をお示ししたいと思います。

類型 状態像
補助 買い物や会計は可能であり、書類の内容も難しくなければ自力で把握できる。しかし、文章量や漢字が多いなど難しい内容になってくると他者の援助が必要になる。
保佐 会計は何とかできるが、小銭を出してまとまったお釣りになるよう調整することは出来ない。書類の内容に関しては別の人が概要を伝えれば何とか理解することが出来るが、細かい部分についての把握は難しい。
後見 買い物でお釣りを誤魔化されてもわからないレベル。書類に関しても内容を全く把握できず、自分の名前を記入することもままならない。

ざっとこんな感じです。先ほども言いましたが、あくまでも指標です。状況や持っていき方によって保佐相当の人が後見類型になったり、反対に軽くなったりと、ケースによって異なります。

また、勘違いされる方が多いですが、判断基準は「財産管理や契約行為がどの程度出来るのか」という点です。会話の明瞭さなどは類型に影響を及ぼしません。

 

類型ごとに与えられる権限

「同意権」「取消権」「代理権」という3つの権利があり、本人の類型に応じて後見人(保佐人・補助人)に与えられる権限に違いが生じます。

本人の利益や残存能力を守る意味でも、必要以上の権利を与えないような仕組みになっております。

類型 後見人等に与えられる権利
補助 判断能力があるため基本的には本人の裁量に任せる。しかし、「取消権」を与えることで本人に不利益となった契約の取り消し行為を代行することが出来る。
また、本人の同意があれば代理にて所定の行為が可能となる。
保佐 判断能力はほとんど残っていないため、逐一本人への同意は必要としていない。しかし「代理権」を与えることで一定の契約行為などを保佐人が行うことができる。
※何の行為に代理権を与えるかについては申し立て前に予め決めておく必要あり。
後見 判断能力は無いため本人への同意は必要としていない。ほとんどの行為を後見人が行うことが出来るため、他2類型と比較すると権限の範囲は非常に大きい。

基本的には「〇〇権」を付与することで本人に代わって後見人(保佐人・補助人)が権限を行使することが出来ます。

後見類型を除き、どういった行為を依頼するかは本人が申立前に決めておく必要があり、着任後に新たに加えるとなると再度家庭裁判所へ申し立てる必要があるため面倒です。事前に何の部分について権限を与えるか考えておきましょう。

 

申し立て方法

家庭裁判所へ申立てることのできる人は限られています。色々とありますが大きく分けると、本人、配偶者、4親等内の親族、市区町村長となっています。

このような人たちが書類を揃えて提出することで、受理した家裁が後見人を選任していきます。誰が後見人になるかは案件の状況によって異なります。家族が申立人となり、その後も協力的に動きそうであれば家族が選任されることが多いですし、逆に本人が申し立てたもののほかに頼れる身内が不在であるなら、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職後見人が選ばれます。

また、「後見類型」という診断の場合は本人による申立ては出来ません。「判断能力が全くない」という類型であるにも関わらず、必要書類を一式揃えて提出することは事実上不可能であると考えるからです。

市区町村長も申立者になっていますが、これは「誰も申立てる人がいない」場合の最後の砦として設定されています。後見類型で本人申し立ては出来ず、かといって4親等内に頼れる身内もいない…という場合には、住民票のある市区町村長の名前で家庭裁判所に申し立てを行います(書類を揃えるのは地域包括支援センターの仕事です)。

申立て業務は専門家に任せることをお勧め

通常であれば申立人が必要な資料などを集めていきます。ただ、あらゆる行為を代行するわけですから、それ相応の準備が必要です。参考までに法廷後見での申し立てに必要な資料一覧を下に記します。

【必要書類】

◆申立書  ◆申立付票  ◆親族関係図(4親等内の関係が分かる戸籍謄本を含む)  ◆本人の財産目録  ◆本人の収支予定表
◆診断書  ◆本人分の戸籍謄本  ◆住民票  ◆障害者手帳(あれば)
◆不動産全部事項証明、固定資産税評価証明書(あれば)
◆預貯金(通帳のコピー) ◆株式の残高報告書(あれば)
◆生命保険などの証明書(あれば)

他にも介護保険証や医療保険証など細かいものも必要です。特に、親族関係図を作成するために集める親族の戸籍謄本が大変です。複数の役所と定額小為替でやり取りをする必要があり1度では到底済みません。

自力でやれば1~2万円程度の出費で申立てを行うことが出来ますが、余程時間に余裕がない限りはやめた方が良いです。時間が掛かるだけで、選任されるまでの日数が延びてしまいます。

こういった業務は弁護士や司法書士といった専門家に依頼することが出来ます。費用に関しては弁護士で20万円ほど。司法書士で15万円ほどになりますが、仕事として受けますので非常にスピーディーかつ正確です。

自力で行う場合は資料の準備を始めてから後見人が選任されるまで4カ月ほど要しますが、専門家に依頼すれば1~2カ月ほどで済みます。急ぎの事情があればもっと早いです。私の知る限りでは2週間で選任までこぎ着けたケースがありました。

 

後見人への報酬や決め方

後見人が選任されると当然報酬を支払うことになります。ただ、本人の経済状況や、どの程度活動したか(後見業務をこなしたか)によって、あるいは後見人の職種でバラつきがあります。

また、開始からすぐに支払いが発生するわけではありません。活動から1年後に後見人が家庭裁判所に「活動報告」を提出し、それに本人の経済状況を加味した上で過去1年分の報酬が決定されます。

家族が後見人として動いている場合には無報酬であることがほとんどです。専門職後見人の場合には職種によってバラつきがあります。あくまでも目安ですが、職種ごとの平均報酬は以下の通りです。

職種 報酬(月額)
弁護士 5万円
司法書士 3万円
社会福祉士 1,5~2万円

資産の大きいケースは弁護士が着任することが多く、逆に経済的な余裕がない場合には社会福祉士が選任される場合が多く見受けられます。

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